私たちが重視している問診や内診とは?

何年も治療を行った方にも もう一度治療の原点に戻って、
基本的な診察を行います。
最適な治療を行うために、私たちは問診や内診を重視しています。

診察のポイント
現在のART(体外受精や顕微授精)の問題点は卵のクオリティの改善に向けられています。 採卵に至るまでの卵巣での体内環境は卵の質に影響を及ぼします。以前に私たちが卵巣の周囲の癒着とART治療成績の関連を調べた結果、 高度卵巣癒着症例ではART治療成績は低下しました。ARTの採卵術を行う医師は内診や超音波検査で患者さんの骨盤内所見を十分に把握し、 適切な治療成績のインフォームドコンセントを行う必要があると考えています。

問診のポイント-卵巣の働きの左右差や癒着の有無に注意
体外受精(ART)などの高度な治療の適応患者さんには骨盤内癒着を有する方が多く、 癒着がクラミジアに起因する場合と子宮内膜症に起因した場合で、ART治療成績は大きく異なります。
まず患者さんの月経歴を十分に問診した上で内診を行い、内膜症の内診所見を見逃さないようにすることが診察上重要です。 骨盤内手術既往のある患者さんも癒着に注意して診察します。子宮外妊娠や小児期虫垂炎も卵巣の周囲に強い癒着を起こすことがあり、 採卵困難となるので注意を要します。
子宮筋腫核出術既往のある方は、取り出した筋腫の大きさや位置に関する問診は重要で、子宮創面に卵巣が強く癒着し、 採卵時に子宮穿通を余儀なくされることがあるので採卵時の疼痛についての十分な理解が必要です。
過去にARTを受けた既往患者さんでは、その際のARTの経過を詳細に問診します。ARTの際の併用薬、 排卵誘発法とそれに対する反応性、採卵数(左右差の有無)、受精状況(左右差の有無)、胚分割の状態、 移植した胚の状況、凍結の有無などは重要な問診事項です。これらの情報から働きのよい卵巣を推定できるので、 次回のARTの際には卵のクオリティの良い方の卵巣を見極めて採卵日時を決定します。

内診のポイント
 きちんと内診しましたか?着床障害の要因となる子宮腺筋症の診断は、内診所見がもっとも多くの情報をもたらします。 ARTを繰り返している患者さんでは、子宮腺筋症薬物療法後のARTを行うことで治療成績の改善が得られます。
 子宮の動きは骨盤内癒着を知る重要な手がかりとなります。患者さんは診察時に我慢して、痛みを訴えないこともありますが、 丁寧に診察しながら、疼痛の有無を確認することが必要です。骨盤内癒着があると内診時に突き上げるような痛みを感じることがあります。 この中でも特に卵巣高度癒着の患者さんでは、排卵誘発に対する卵巣の反応性低下を認め、 採卵数の低下や受精障害を伴ってART治療成績は低下します。内膜症に起因する癒着では、 ART前に内膜症薬物療法を行うことで受精率改善や良好胚の採取を得られることがあります。
 既往手術に起因した癒着では癒着の改善は困難ですが、卵巣反応性の左右差を認めることもあるので、 ART前に排卵誘発を行い、働きのよい卵巣の確認を行っておくことも必要です。 ARTを繰り返している方では腹腔鏡手術による骨盤内癒着剥離術もART治療成績改善につながります。

血液検査で着床障害を探る
 良好胚を移植しているにもかかわらず、妊娠に至らないときには、習慣流産に準じた検査を行います。着床障害の原因の第1は子宮因子、 第2は免疫因子、第3は甲状腺ホルモンや血糖、高脂血症などの内科的要因が考えられます。
 子宮に関しては内診と超音波検査で診断し、適切な治療を進めます。免疫因子では体内にできた各種の自己抗体を血液検査で調べます。 自己抗体陽性(抗核抗体陽性、抗カルジオリピン抗体陽性)の方には低用量アスピリン療法や漢方薬治療が奏効します。 内科要因は内科の専門医師を受診し、適切な投薬を受けることで、ART治療成績は改善します。

当院の治療プロセス

不妊原因を適確に診断すること、これがとても重要です。そのためには婦人科の内診や患者さんとの話し (問診)が大切になってきます。それらの情報で80%の診断が可能です。 ホルモン検査や卵管造影検査でさらに確実な不妊原因の診断を行います。これでほぼ100%の患者さんで不妊原因がわかります。

原因がはっきりしてはじめて、治療の方法が明確に決まるのです。これを治療のIndication(インディケーション)と言います。 排卵に問題があるときは排卵誘発剤を、フーナーテストが不良のときには人工授精を。 原因がオーバーラップしているときは原因に合わせていくつかの治療を組み合わせます。 不妊期間が長くなると原因が複雑にからみ合って、いたずら(悪戯)に治療に時間を費やしてしまいがちです。 この数年間、不妊症治療は医療から少しかけ離れています。「ステップアップ」という言葉がよく使われますが、 医療にステップアップという言葉は使用しません。はじめにきちんと適確に診断して、はじめから適応ある治療に積極的に進む。 これが私たちの考える妊娠への近道です。

診断や適応の情報は、時としてカルテの中に閉じ込められ、患者さんに伝わっていないことがあります。 私たちは、診断、原因、適応、治療に関する情報はすべて患者さん自身のものと考えています。 それらの情報をわかりやすく解説することが、私たちスペシャリストの重要な役割です。 「納得いくまでじっくり医師と対話すること」‥‥今、不妊治療の現場で一番患者さんが求めていることではないでしょうか?

確かな技術を提供する。これが私たちの求める医療です。排卵誘発の技術から、顕微授精や胚凍結といった高度な技術まで、 すべてにおいて完成された確かな技術を提供します。

お二人の選択した治療にベストをつくすこと、これが私たちの重要な仕事です。