胚の培養方法

母親の体内に限りなく近い培養環境で、
ストレスを与えよう見守りながら育んでいます

卵管に代わって胚を育む

胚(受精卵)は、お母さんの体の中では卵管から子宮に移動しながら発育していきますので、培養室では、この体内の環境にどれだけ体外(培養室内)の環境を近づけることができるかが重要となります。
当クリニックでは、1999年の開業以前より体外培養環境の最適化に関して継続して研究を行って参りました。これまでの20年以上の研究の中で得られた結果から、当クリニック独自の培養方法を構築しまして、すべての胚に最良の培養環境を提供しています。

当クリニックの培養方法の特徴

1. 全例タイムラプスインキュベーターによる個別培養

胚の発育状況は、インキュベーターの外に胚を出し、顕微鏡にて観察することが必要ですが、胚をインキュベーター外に出すことは、胚にとってストレスとなります。当クリニックでは、インキュベーターの中に胚を静置したまま胚を観察できる最新のタイムラプスインキュベーターを導入し、全例に適応しています。

タイムラプスインキュベーター

2. 培養液の管理

培養液は、様々なメーカーから販売されており、それらすべてにおいて品質評価試験が実施されています。しかし、搬送中の品質管理が不明であることやメーカーの品質基準では評価できない項目があることから、当クリニックは、独自の品質評価基準を設け、培養液が当クリニックに届きましたら、すべての培養液の品質(状態・pH・浸透圧・エンドトキシン濃度など)を再度チェックし管理しています。実際にメーカーの品質保証のある培養液でも、当クリニックの基準を満たさないものもあります。それらの培養液は一切使用せず、常に最高品質の培養液のみを使用しております。

3. 確かな結果から導き出した培養システム

培養システムは、大きく二つの方法にわけられます。一つは、胚培養の前半と後半で培養液の種類を変更する方法(逐次培養)で、これは胚のエネルギー要求性が前半と後半で変化することを考慮しています。もう一つは、胚培養の期間を通して同一培養液を用いる方法(単一培養)でして、これは胚発育に必要なエネルギーは必要な時に必要な量を胚が自ら選択して受容するという考えから構築されました。

現在は、どちらの培養システムで培養しても成績に差がないということが多く報告されていることに加えて、タイムラプスインキュベーターを用いた胚を外に出さない培養方法が主となっていることから培養液の種類を変更する必要のない単一培養が多くの施設で採用されています。

しかし、当クリニックでの研究結果では、胚盤胞までの発育能を比較しますと、どの培養システムでも差がないように見えますが、実は培養液ごとに特徴が異なるということがわかりました。それは、やはり胚発育の前半に力を発揮する培養液もあれば、後半に力を発揮する培養液もあるということです。
当クリニックでは現在販売されている多くの培養液の特徴を調べまして、独自の逐次培養システムを構築しました。当クリニックの逐次培養システムは、どの単一培養システムよりも良好な培養成績を得ています(日本受精着床学会誌2017, 2018)。

当院独自の培養システムの培養成績

4. 着床改善を考慮した培養システム

近年、胚の着床改善を考慮したヒアルロン酸含有の胚移植用培養液が開発されています。ヒアルロン酸は体内のあらゆるところに存在していますが、胚の着床に関しては、胚と子宮内膜とを繋ぐ補助的役割があることが報告されています。
当クリニックでの研究においても、ヒアルロン酸含有の胚移植用培養液は、胚移植後の妊娠率が向上することがわかりました。当クリニックでは、さらに研究を進めまして胚移植用培養液という特別な培養液を用いなくても、通常の培養液にヒアルロン酸を加えることでヒアルロン酸含有の胚移植用培養液と同等の着床改善効果が得られることを明らかにしました。当クリニックで使用している培養液には、すべてヒアルロン酸が含まれており、着床改善を考慮した培養システムを構築しています。

ヒアルロン酸含有培養液を用いた胚移植後の臨床妊娠率

診療スケジュール
Schedule

完全予約制・初診は平日のみ

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